ESSEC-MBA 2010年卒 栗山 尚征
留学期間: 2008 年 8 月.0 2010 年 8 月まで (8ヶ月間のインターンシップを含む)
留学形態: 社費派遣
勤め先: 財閥系総合商社
1)ESSECに入学する前のキャリア
東工大大学院(計算工学)卒業後、商社にて、鉄鋼製品の貿易実務に3年半従事していました。具体的には、日本の大手鉄鋼メーカーで作られた鋼材を、主に
中国、インド、オーストラリアといった、アジア地域向けに輸出する担当をしていました。業務を通じて、物流や営業の経験を積み、海外出張等の機会にも恵ま
れた日々をおくっていました。
2)ESSEC MBAを選択した理由
自分の将来の夢は、世の中に大きなインパクトを与える事業を創造する事でした。その為に、上述のような経験を積んだものの、経営的な全体観が無い事、ま
た国際コミュニケーション力が足りない(英語は日常業務で使っていましたが、海外に住んだことが無く、日本人がマイノリティである環境で、他言語で長期間
生活した経験が無かった)ことは、若い20代のうちに、何とか克服したい課題でした。そこで、会社の制度も含めて色々検討した結果、MBAが候補に挙がり
ました。
3)入学してからの感想
ESSECはとても柔軟なプログラムであり、経営科目の授業は英語とフランス語、どちらで履修しても卒業する事が出来ました。また、卒業期限も特に設け
られてはおらず、インターンや交換留学等を組み合わせて、大体は2~4年位で皆自由にプログラムを組んで卒業していたようです。
統計的にはフランス人が8割で、後は国籍がバラバラという事前情報でしたが、実際、フランス人はフランス語で授業を履修することが多く、交換留学生も数
が相当数参加しており、結果として、英語で授業を履修すると、フランス人が2、3割を切るような授業もありました。そのかわり、中国やインド、また旧植民
地であったレバノンやモロッコ、ドイツ(マンハイム大学と交換留学が盛んなので)といった国籍が目立ちました。
私たちが入学した年は、500人のMBAの生徒のうち、4人が日本人で、私以外は、省庁からの男性、他の財閥系商社の男性、私費の女性でした。短期も含
めると、3名がフランス語圏に住んだ経験、うち2名が英語圏にも住んだ経験がありました。出身大学は、東大、京大、早稲田、東工大で、理系文系もバラバ
ラ、年齢や職務経験等のバックグラウンドもバラバラでした。総じてESSECに日本人が少ない事により、外国人とのコミュニケーションが多かったように感
じます。
私は入学時27歳でしたが、それでもESSECのプロパー学生と比べると大概は年上でした。一方で、ESSECは世界中の学校と提携しているので、交換
留学生がとても多く、自分以上の職務経験を持つ仲間ともチームを組む事もありました。
授業自体は、非常に素晴らしい先生が多く満足できましたが、各科目人数制限があるので、毎回ターム毎に選択科目の希望を出して、希望が通らない場合、人
気の無い授業に当たってしまう事もありました。クラスの人数は多くても50人、少ない場合は12人くらいの授業もあり、発言の機会が学生に十分与えられて
いるのも良かったです。
ファイナンスやマーケティングは、先生のレベルが高く充実していたように感じます。一方、学生全体が若いので、組織論等々のテクニカルでない授業は、その点を留意したほうが良いと思います。
生活は、CergyというパリからRER
A線で40分位?の所に位置していますが、私はパリでの生活を満喫するため、パリに住みました。多くの留学生は、学校近くの寮か、或はパリ市内に住むこと
を選択していました。どちらも治安は日本程では無いですが、何も問題は無かったです。パリに住んだことによって、友達の家でグループワークしたり、美味し
いレストランを開拓したり、貴重な経験でした。
4)コース終了後のキャリアとこれから
私は会社が認めてくれたこともあり、卒業に必要な科目の単位取得後は、パリに残って、学校OBのフランス人が作ったベンチャー企業で3ヶ月インターンし
た後、ロンドンに引越し、ロンドンに本社をおく100人弱の規模のITベンチャーの財務部門で2010年8月迄5カ月間インターンしました。今は、東京に
戻って、化学品関連の投資業務に従事しております。
この文章を書いている時点では、まだ帰国から余り日が経っていないのですが、今の時点でも、留学前に比べて視点が広がったことを実感していると共に、こ
の間も早速新宿でESSEC時代の友人のモロッコ人とご飯を食べる機会があるなど、人の繋がりも広くなったのだなと実感しています。
5)受験を考えている方にメッセージ
一度大学を出てから、再び海外の大学に進学する事に関し、多くの方がその意義について悩んでいらっしゃるかと思います。自分自身は、幸運もあって、受験
や留学を通じて、数えきれないくらいの多くの人と出会い、時には助けて頂き、間違いなく世界が広がった実感があります。改めて、色んな方々に感謝すると共
に、もしESSECにご興味をもたれた場合は、出来る限り御相談にのりますので、お気軽に日本事務所経由御連絡下さい。
ESSEC-MBA 2008年卒 武内理奈 現職 (2012年12月末現在) : 世界 銀行・ワシントン本部 Private Sector Development Specialist, Investment Climate Unit
<はじめに>
私はESSEC留学をきっかけに、ヨーロッパやアメリカで様々な国際経験を積む機会に恵まれました。MBA後の進路としては異色ですが、ESSEC卒業と同時に、外務省所属で在ジュネーブ日本政府代表部でWTO貿易交渉に従事し、その後、スイス政府の出資により、途上国政策アドバイザーとして、タジキスタンやラオス(ASEAN), モンテネグロといった国々とスイスとの間を行き来しました。そして卒業後4年がたった今、世界銀行ワシントン本部に転職し、途上国の民間投資環境改善に向けたプロジェクトをリードしています。 ESSEC進学を考慮されている皆様の参考となるよう、これまでの歩みを振り返ってみたいと思います。
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ESSECに入学する前は、東京の米国系コンサルティング会社で主に官公庁の公共事業関連のプロジェクトに従事していました。学生時代に訪問した途上国での経験から、国際機関で働きたいと希望していたものの、まずは短期間で実践的なビジネス・スキルを習得すべく、この業界を選びました。新卒で入社するなり、夜中の2時頃、時に朝方まで働き、週末もチームで出勤するようなこともしばしば、といった過激なプロジェクトも多くありましたが、上司にも恵まれ、優秀な同僚と切磋琢磨しつつ様々なことを学びました。入社前、「1年で5年分の経験が積める」と聞いた通りの中身の濃い仕事にやりがいを感じつつも、大組織の中での自分の付加価値について考え始めたのは5年目に差し掛かった頃でしょうか。キャリアの節目を経て、多くの同僚が次々と転職・独立していく中、私自身も少しずつ、今後の人生について再考するようになりました。一度初心に帰り、自分を見つめ直すためにも、海外で働きたいと思うようになり、キャリア・チェンジの強力なパスポートとなるような学校選定をし、ESSECを選びました。
<ESSECを選んだ理由>
1)伝統と歴史: ESSECはフランスを代表する歴史ある商業系のグランゼコールの一つであり、他の欧州系MBAプログラムよりフランス人の割合が高く、純粋な仏高等教育機関の歴史と伝統を感じました。前職では、アメリカのビジネスや文化に触れる機会は日常的にありましたので、グローバルな視点を養い、バランスのとれた人材となるためにも、欧州系の純粋なビジネスのアプローチや企業文化に触れてみたいと考えました。
2)プログラムの柔軟性と起業家精神: 欧州系MBAプログラムと比較分析しても、ESSEC-MBAほど柔軟性のあるプログラムはなかなかないと感じました。私にとっての留学の意義の一つに、第二外国語の強化という目標がありましたが、科目によって 仏語と英語のクラスを好きな比率で組み合わせたり、規定コース以外のプログラムの科目を加えてみたりと、自分の関心の優先度や期間に合わせたり、柔軟にカスタマイズできるのは非常に魅力的でした。また、社会起業家養成のクラスや学生起業家を支援するプログラム等、起業家精神に溢れた自由な校風も魅力でした。
上記の内容に加え、ESSECを卒業し、様々な経験を振り返って思う当プログラムの利点は以下にあると思います。
(a)企業との密接なネットワーク: 企業との距離が近い、それが肌で感じた印象です。私自身、入学後、当プログラム日本人学生としては初めて、ロレアル奨学金を得るという幸運にも恵まれました。卒業前の3か月はロレアル本社で日本市場や競合他社分析等に従事し、フランスの企業文化の中でアジア向け事業の戦略立案等に貢献することも出来ました。上述のプログラムの柔軟性により、規定の卒業時より6カ月早く、ほぼ全ての必修単位を取得出来ましたので、長期インターン・シップでインテンシブな研修内容を組むことが出来ました。仕事は楽しく、現在でも当時の同僚や上司とは連絡を取り合っており、今後も様々な方面で協力し合っていけると感じています。ESSECの場合、特にフランス国内では、高級ブランド業界をはじめとした大企業に、非常に強いネットワークがあります。幹部として多くの卒業生が活躍しており、就職イベントや企業との合同イベントも頻繁に実施されていました。また、卒業条件としてインターンを課しており、学生はビジネスの前線で常にネットワーキングをする機会に恵まれていました。厳しい欧州経済の中にあっても、これらの経験を通して、フランスや欧州での就職に成功した外国人学生が多く輩出されていたと思います。実務経験の強化や海外就職に強い学校という印象を受けました。
(b)学生への細やかなサポート: プログラムを通して、学生と学校・教授の距離を非常に近くに感じました。在籍中は、チューター制度により、自分が選んだ教授と定期的にカウンセリングを受けることも可能でした。また、キャリア・カウンセラーに英仏のCVのレビューを依頼したり、卒業後の進路相談を受けることも可能でした。また、入学前より日本事務所代表の大森さんからも日本語で懇切丁寧なサポートを継続的に受けることが出来ました。他のフランスMBAに在籍している友人たちと話していても、入学前から在籍期間を通して、学生の目線に立って、個別の学生を丁寧にケアする体制が格段に整っていたように思います。
<ESSECのその後>
私の在籍時の唯一の課題点としては、学生の職務経験にばらつきがあることでした。優秀であるもののフランス人学生は比較的若く十分な実務経験に欠ける者が多い一方で、外国人学生は長い職務経験を有し、ケース・スタディの際などにそのギャップを感じることがしばしばありました。
このような学生の意見も考慮し、ESSECでは私が卒業した後の2011年からGlobal MBAを立ち上げ、実務経験の長い人はGlobal MBAを履修するように奨励し、若い学生とのギャップの解消に努めていると聞いています。私の卒業したGrande Ecoleメイン・コースのESSEC-MBAはESSEC Master of Science in Managementというマスター・コースに移行し、シンガポール・キャンパスも設立して、ビジネスのグローバリゼーションと多角化に伴う学生ニーズに対応しているようです。学びのフォーマットは学生のニーズやビジネス環境の変化に応じて今後も進化し続けるかもしれませんが、その根底にあるESSECの哲学や文化は変わりません。上記のような利点を考慮して、ESSECに勝るプログラムはないと今でも思っています。
<結びにかえて>
現職は、コンサルティング時代の業務最適化やガバナンス、途上国政府内での法制度改革・政策立案アドバイザリー等、これまでの経験の様々な要素が網羅されています。IFCと共同で、各国政府とタイアップして民間投資環境を改善することをミッションとして掲げており、過去の官民両方の経験が共に活かせる非常に稀有なポジションを得られたと感じています。現在の部署では、とくに戦略コンサルティング出身者も多く、全体的に民間色の強い印象で、世銀において最も起業家精神の高い部署だとも言われています。多くの言語が飛び交う中、常に合理的かつ効率的に膨大なタスクをこなしていく必要があり、国際機関での職務においても、ESSECで集中的にビジネス・スキル全般を強化していて本当によかったと思います。また、プロジェクトの言語がフランス語の場合もあるので、その点でもMBAに多大な付加価値がありました。
このように、私にとって今のキャリアの原点がESSEC-MBAプログラムであり、国際舞台にステップ・アップするきっかけを与えてもらったと感じています。素晴らしい教授陣やその他多くのサポートもあり、ESSECでの時間は、現職に至るまでの過去の経験を融合し、最適化していくリエゾンの期間でもありました。今後もESSECに与えてもらった機会とそこで出会った素晴らしい人々に深く感謝しつつ、これまでの経験を最大限生かし、日本人として、またESSEC卒業生の一人として、可能な限りの国際貢献をしていきたいと考えております。